病院や健診施設は「キャパシティ・ビジネス」です。
聞きなじみのない言葉かもしれませんが、定義や業界例は以下のとおりです。
定義:設備や空間の容量・キャパシティ(部屋数、席数など)に明確な上限があり、その枠内でどれだけ稼働させるかがビジネスの軸となる業態
例:ホテル、航空機、新幹線、映画館、野球場、美容院など
病院や健診施設もまさに「キャパシティ・ビジネス」です。
このコラムでは、キャパシティ・ビジネスの他業界の特徴や手法を取り上げ、病院・健診ビジネスで参考になりそうなエッセンスを抽出します。
病院・健診施設はキャパシティ・ビジネス
ホテルは客室数に限りがあります。航空機や新幹線は座席数に限りがあります。
プロ野球の阪神タイガースは今、大人気で本拠地・甲子園球場のゲームは常に満員です。しかし甲子園球場の収容観客数には上限があるので、甲子園の拡張工事でもしない限り、これ以上大幅に観客動員数が増えることはありません。
病院・健診施設も同じで、一日に受入可能な人数には限りがあり、予約枠の限界を無視して「今日だけ特別に倍売り上げる」ということができません。また「今日余った予約枠を明日に持ち越す」こともできないビジネスです。
病院長やセンター長は「病院・健診施設はキャパシティ・ビジネス」を前提に、経営戦略を考えます。
キャパシティ・ビジネスで収益を上げる工夫
ホテルを例に、キャパシティ・ビジネスでいかに収益を上げるか、どういう工夫をしているか見てみます。
また病院・健診施設で参考にできる手法はないか、なども見ていきます。
①予約率を上げる
「予約率」はキャパシティ・ビジネスの根幹となる重要な指標です。
予約率を上げるために、例えばホテルであれば自社サイトに加え各種旅行系サイトへの掲載も活用し、広告を出す、割引クーポンを出す、など様々な販促を行います。
広告やクーポンは病院や健診施設では安易に出せるものではないかもしれませんが、「予約率」を重要な経営指標として管理する点は共通です。
②キャンセル対策をして来館率(来院率)を上げる
キャパシティ・ビジネスで一番怖いのは「キャンセル発生」です。
特に当日ドタキャンは目も当てられない…、これはキャパシティ・ビジネスの共通項でしょう。
予約率がいくら高くても、キャンセル率が高ければ意味がありません。
予約した方が当日確実に来館(来店・来院)する仕掛けと、キャンセルに対する毅然としたキャンセルポリシーを用意することもキャパシティ・ビジネスでのリスク管理としては重要なことです。
加えて、キャンセルが発送した場合に別の顧客で予約枠を埋められるよう「キャンセル待ちの仕組みを作り」「直前ギリギリまでweb予約や電話予約可能とする」などの工夫にも余地があります。
③回転率を工夫し設備稼働時間を増やす
ホテルでは「レイトチェックイン」「アーリーチェックアウト」を割引サービスとして利用を促し、そこで生みだした日中の時間帯をデイユースとして開放するところも増えました。
1室を1日1件でなく2件にすることで、1室1日あたりの収益を増やすことができます。
病院・健診施設においては、検査時間が午前中に集中することが多い場合、午後など検査が少ない時間帯を活用できるオプション検査を導入する、などの施策が考えられます。
④単価を上げる
ホテルでは「食事をグレードアップする」「スパ・エステを利用する」「記念日プラン」など様々なバリューを提供しつつ、単価アップを狙います。当然ですが、1日1室1組の顧客でも、単価が上がれば収益は上がります。
健診や人間ドックでも単価を上げる工夫は可能です。
「胃X線検査より胃内視鏡コースを誘導する」「オプション検査を追加する」「胃内視鏡検査で有料で鎮静剤を使用できる」「体組成測定や保健指導・栄養相談を追加する」「検査後に昼食を提供する」など、いくつか施策は考えられます。
どの業界でも、上手にビジネスを行っているところは必ず客単価を重要な経営指標として注視しています。
病院・健診施設でも単価を上げる施策は有用な収益向上施策になります。
どうやって病院・健診施設に応用するか
キャパシティ・ビジネスの他業界の取り組みを、どうやって病院・健診施設に応用するか、2ステップで考えます。
①ホームページ等から手法を学ぶ
ホームページはお金をかけず、他業界の手法を知ることです。
例えば貴院が新しいキャンセルポリシーを導入する場合、そのルールやお客様への周知方法、規約の記載方法など、他社事例から多くのことを参考にできます。
もちろん同業界、つまり他の病院・健診施設からの学びも重要です。
②実際にサービスを利用し、感想をチームで共有する
より深く実感できるのは、実際にそのサービスを利用してみることです。
ホテルや新幹線などは、比較的利用機会も多いでしょう。その際に意識して予約システムの仕組みを見る、キャンセルの際には何が起こるか確認するなど、体験してみることで多くのことが学べます。
さらに、それを個人の感想に留めるのではなく、メモ程度でよいので簡単にまとめ、部門の定例ミーティングなどで共有し意見を出し合ってみます。そうしか活動の積み重ねにより、個人の知がチームの知に広がります。
知が広がり経験が重ねられたチームは、いざ「うちもキャンセルポリシーを見直さないとね」となっても「例えば航空会社さんはどうしているだろう」など、自然と他業界を参考に良いものを迅速に作れるようになります。
まとめ
病院・健診施設はキャパシティ・ビジネスであり、ホテルや飛行機といった他のキャパシティ・ビジネス型の業界のエッセンスにヒントがたくさんあります。是非それらを学習し、体験し、チームで共有し、組織の知とすると良いでしょう。