電子カルテシステム(以下、電カル)の導入やリプレイスは、病院にとって多大な予算とパワーを要する大プロジェクトです。そこではシステム選定からデータ移行、職員研修など多くの作業が発生するため「無事に稼働させること」が優先され、やむなく「現行業務をそのままシステムに流し込む」だけに手一杯になりがちです。
しかし、電カル導入こそ業務改善を進める絶好のチャンスです。
「人・プロセス・ツール」の3つの視点で考えてみましょう。
人 – 病院全体が同じ方向を向くタイミング –
電子カルテ導入は、病院全体を巻き込むプロジェクトになることがほとんどです。
医師・看護師・医療技術職・事務職、そしてIT部門など多くの部署が参加し、それぞれ準備を進めます。
また、システム導入にはベンダーが定めた稼働日があり、その日までに必ず準備を終えなければなりません。
期限が明確にあり、かつ病院全体が同じ方向に動くので、「システム刷新のため」の院内調整もしやすくなります。業務改善には絶好のチャンスです。
プロセス – 業務のやり方を見直す –
電カルの導入・更新に伴い、周辺システム(健診システムや検査システムなど)を同時に刷新するケースも多く見られます。その際、必ず発生するのが「マスターデータの整理・移行」です。
ここでおすすめしたいのは、現行業務をそのまま新システムへ移すのではなく、業務プロセスそのものを見直すことです。
過去の経緯で複雑化してしまった検査項目、独自のコード、運用ルールをそのまま新しいシステムに移行してしまうと、業務の無駄まで引き継ぐことになります。
「不要なマスターは整理できないか」「入力ルールをこれを機に統一できないか」「運用方法をもっとシンプルにできないか」といった論議、何年も前から指摘され続けている課題などを、一気にクリアするチャンスです。
業務プロセスを見直し、その結果をふまえ新しいマスター体系で新システムを稼働させましょう。
予備校の先生ではありませんが「いつやるの? 今でしょ」です。
ツール – マニュアルもいっしょに見直す –
新しいシステムや端末(PC、タブレット等)が導入されると、スタッフ向けの操作マニュアル作成や研修が必要になります。この際、単に操作方法だけをまとめるのではなく、業務も刷新し、それもマニュアルへ反映させ、スタッフ教育を行えば、定着化が一気に進みます。
別々のプロジェクトにすると「二度手間」になる
もしシステム導入とは別に改善プロジェクトを行う場合、システム導入で実施する以下のタスクを、改善プロジェクトのタスクとして再実施する必要があります。
- 関係者調整
- システムの修正
- マニュアルの作成や修正
- 教育
改善プロジェクトは病院全体の電カル導入プロジェクトと比べると規模が小さく、病院全体の協力を得ることが電カルプロジェクトほど容易でないかもしれません。
まとめ
この考え方は、電子カルテに限らず、健診システムや部門システム、あるいは病院会計システムの導入・刷新時にも全く同じことが言えます。この機会を活かして、人・プロセス・ツールの3つ観点で業務を見直すことで、結果的にはスムーズな業務改善につなげることができます。
システムは「業務を変えるため」に導入するものではありません。
しかしながら、システム導入は「業務を改善する絶好の機会」です。
是非システム導入と業務改善はセットで検討しましょう。