「来月から健診センター長に着任することになったが、何から手をつければいいのかわからない」
というお悩みは少なくありません。意欲があればあるほど手当たり次第に改善を始めたくなってしまうものです。
しかしやみくもに「全部気合で頑張る」では後に苦労してしまうことがあります。最初にすべきことは現状の理解と、施策の優先度付けです。
重要な期間である「着任最初の3カ月」の進め方がイメージできるよう、モデルをご紹介します。
最初の3カ月をフェーズ分けする
着任後の最初の3カ月を「現状把握」「施策検討と優先度付け」「実行と検証」に分けると「今、何をすべきか」「次は何をすべきか」がクリアになります。
まずは以下2つを中心に、現状の正確な把握に注力します。
定量的なもの
各種の数値データを集め、把握します。
- 経営・会計指標:売上や利益率、受診者数、平均単価、人件費、材料費など
- オペレーション指標:予約率、稼働率、オプション申込件数、検査時間、待ち時間、クレーム件数など
定性的なもの
各メンバーへヒアリングし、現場の「生の声」を聞くことに徹底注力します。既存の運用ルールや現場の人間関係、スタッフが感じている日常的なストレスを丁寧にヒアリングします。
また可能な限り自ら積極的に観察し、ヒアリング内容と現場の実際にギャップがないか確認します。
現状把握フェーズで集めた定量的・定性的な情報をもとに、センターの課題を整理します。
意識の高いメンバーを積極的に巻き込むのが効果的です。
施策案が複数、もしかすると大量に出るかもしれません。その際は「インパクトが大きく、かつ実行のハードルが低い課題(クイックウィン)」から取り組むのが良いでしょう。
なお、すぐ実施できる施策は、2か月目を待たずとも開始できるタイミングでスタートして問題ありません。
優先度付けはセンター長の重要なミッションです。
施策の一覧を見ると「あれもしたい、これもしたい、もっともっとしたい」となると思いますが、全部やろうとすると全部が中途半端になりがちです。あえて優先度付けをするのはセンター長の重要なミッションです。
具体的な進め方は「プロジェクト推進 > Keystone」をご参照ください。
優先度付けを行った施策からテスト導入(トライ)を行います。
モットーは「スモールスタート」です。
最初から仰々しく完璧はやろうとすると前へ進みません。小さい範囲、簡単なことから少しづつで結構です。
施策は現場と会話して進めます。
「今日どうだった?」
「全体としては悪くなかったですが、この部分は少しこう修正した方が良いと思いました。」
「では明日はそれを試しましょう。」
などとフィードバックを受けながら検証と微調整を繰り返します。
実行と検証の進め方は「プロジェクト推進 > 仮説と検証を繰り返す」をご参照ください。
「①現状把握 → ②施策検討と優先度付け → ③実行と検証」の3ステップは3の倍数で応用可能です。
狭い領域でしたら「週」単位の「1週目:把握 → 2週目:施策検討と優先度付け → 3 週目:施策の実行と検証」でも構いません。
一方、大組織の根本的な意識改革といった時間がかかるものであれば「1年目:把握 2年目: 3 年目:施策の実行と検証」もありえます。
(プロ野球で最下位から3年で優勝争いができるチームに再建した日本ハム・新庄監督の進め方は好例です)
経営目標と現状とのギャップを知る
健診センターには経営目標や、すでに走っている本年度計画・予算があるはずです。
時期によっては就任早々、いきなり次年度計画を作らないといけない、という状況もあるかもしれません。
健診ビジネスはキャパシティ・ビジネスです。予約枠より多くの来院、収益を上げることはできません。
(詳細はコラム「キャパシティ・ビジネスを他業界から学ぶ」もご覧ください)
よって健診の場合、もし経営目標や計画に到達しないとしたら原因は、大きくは以下のいずれかです。
- 予約枠が埋まらない
- 需要はあるが予約が取れず(予約枠が足りず)、これ以上増やせない
※健診施設全体でなく、コース毎などに個別に「内視鏡コースは埋まるがバリウムコースが埋まらない」「男性は空きがあるが女性は予約が取れない」となっている場合もあります
おそらく上述のことは、わざわざ数字を分析せずとも、院内ですでに認識はされているかもしれません。
方策も机上ではシンプルに
- 予約枠が埋まらない → 販促の施策
- 予約が取れない → 予約枠を拡張できるよう運用面の見直し
となります。
とはいえ机上のように簡単にはいきません。特に健診の場合
「販促を頑張って集客できたとしても、来院が多すぎたら施設が受け入れられない」
「先に予約枠を拡張し人員体制を整えても、集客がない場合いろいろなコストが無駄になる」
と相互矛盾があり、常に最適バランスを要求されることです。
販促などのマーケティング、検査業務見直しによる予約枠拡張などは、いずれも単体で重いテーマになるので、コラムなど別の場で適宜取り上げてまいります。
一旦このコラムのテーマ「新任の健診センター長が最初の3カ月でやるべきこと」に戻れば、最初の3カ月は経営指標の理解と方策のおおまかな方向性を見定める、で良いでしょう。
業務の課題をマトリックスで整理する
現場スタッフへのヒアリングを行うと、たくさんご意見が出てありがたい反面、それが健診センターの業務全体像の中でどこに位置して、どこに影響があるのか、わからなくなってくることもあるかと思います。
ここでは業務課題をシンプルに整理するマトリックスをご紹介します。
この作業、特にSTEP3と4は、センター長が一人で机上で行うのではなく、現場の各職種(看護師、検査技師、事務スタッフなど)を集めたワークショップ形式で実施するのが成功の鍵です。
現在行われている業務フローをあぶりだします。
以下に健診でよくある業務フローを例示します。(もし貴院特有の業務があれば、適宜変更します)
- 販促(個人や企業・健保などへアプローチする)
- 予約(Web予約や電話予約の対応、および枠管理など)
- 事前準備(検査キット発送、検査資材手配など)
- 検査当日(※ここではあくまで概念的にとらえ、詳細は以下のように別シートでの分析が推奨)
- 結果報告(読影や判定、結果表の作成と発送)
- フォローアップ(二次検査のご案内、保健指導)
- 次回予約(リピートを促進する)
検査当日については、必要に応じフローを細分化すると良いでしょう。例として
- 受付
- 問診
- 標準コース検査
- オプション検査
- 昼食
- 結果説明
- 会計・次回予約
なおここでは割愛しますが、実際業務では例えば標準コース検査は「身体測定 → 血圧 → 採血…」と、検査毎に細分化できます。
「人・プロセス・ツール」は業務分析のシンプルなフレームワークです。
「人・プロセス・ツール」が揃っていれば業務は回ります。逆に何かが不十分だと業務がうまく回りません。
STEP1で挙げた業務フローごとに「必要なものが充足しているか」「課題は何か」を確認できます。
早速、STEP1で出した業務フローを横軸、「人・プロセス・ツール」と縦軸とし、マトリックスを作ります。
なお、ここではイメージしやすいようにスライドですが、実際には各マスに相当なボリュームの情報が入ります。スプレッドシートで作成するのが良いでしょう。

健診当日の業務フローも同様に作ります。

これまで得られた情報などを、マトリックスの該当する箇所に入れていきます。
書き方に明確なルールはありませんが、何を書くと良いか以下をご参照ください。
スタッフと集中的にミーティング時間を取り、論議しながら進めるのも良いでしょう。
人
その業務に携わる人の情報、要件、課題などを記載します。
- 担当:XXさん、といったお名前や担当者数
- 要件:「XX有資格者が必要」といったスキル要件や「13-14時は2人体制が必要」といったシフト要件など
- 課題:「XXのスキルのある人が少ない」「金曜日が手薄」など課題
プロセス
その業務の手順が整っているか、マニュアル等でそれが明記されているか、などを記載します。
- 担当:XXさん、といったお名前や担当者数
- 要件:「XX有資格者が必要」といったスキル要件や「13-14時は2人体制が必要」といったシフト要件など
- 課題:「XX業務はのスキルのある人が少ない」「金曜日が手薄」など課題を記載
ツール
その業務に使用されるツールについて記載します。作業スペースも広い意味でのツールで構いません。
- 使用ツール:XXシステム、XX対応端末(端末は必要台数なども記載)、XX室を使用
- 要件:Web予約は24時間可能、ユーザー数はXX名分必要、など
- 課題:XXシステムが遅い、停止する、作業スペースが狭い、遠いなど
マトリックスの中身がある程度埋まると、全体像と、その中の課題の濃淡が見えてくるでしょう。
そこからは施策検討と優先度付けになります。本コラムですでに述べた「2か月目:施策検討と優先度付け」をご参照ください。
まとめ
新しく健診センター長に就任したら、やることの方策はシンプルです。
- 最初の3カ月を「現状把握→施策検討と優先度付け→実行と検証」でフェーズ分けする
- 経営目標は現状と照らし合わせて、ギャップとその要因を把握する
- 業務は縦軸を「人・プロセス・ツール」、横軸を業務フローとしたマトリックスを作り、そこに埋めていく形式で課題ややるべきことをスタッフと論議する
最初の3カ月がうまく進めば、軌道に乗ります。
軌道に乗れれば、4カ月目以降にやることも自ずと見えてきます。
きっと良いスタートが切れるでしょう。