病院経営が厳しさが増す中、保険診療だけに頼らない新たな収益の柱が求められています。本記事では、医療機関の信頼を損なわずに経営基盤を強化できる「健診・人間ドックサービス」の導入意義について取り上げます。
厳しさを増す病院経営の現状
昨今の病院経営を取り巻く環境は、かつてないほど厳しさを増しています。物価高騰や人件費の上昇が続く一方、公的医療保険制度に基づく診療報酬は公的にコントロールされているため、医療機関が自らの企業努力だけで収益(粗利)をコントロールすることが極めて困難な構造になっているためです。実際、以下のデータをご覧になった方も多いと思います。
- 民間病院の約6割(61.0%)が営業赤字となり、過去20年で最悪の水準
(出典:2024年度帝国データバンクの調査結果より) - 国立病院全140病院のうち、実に約8割にあたる113病院が経常赤字
(出典:厚生労働省「独立行政法人国立病院機構の令和5年度(2023年度)決算」
病院の使命は利益追求ではありません。しかし安定した経営基盤がなければ、地域医療の継続が困難になるのも事実です。この厳しい荒波でも常に前進できる強い経営基盤が必要です。
経営改善の切り札としての「自由診療」、何を選ぶべきか?
こうした状況の中、自由診療を経営の柱の一つとして検討する病院も増えています。
しかし、病院の理念や地域における役割を考えると、手当たり次第に美容医療等へ参入するわけにはいかないのが現実です。既存の医療スタッフの理解を得にくかったり、病院としてのブランディング・信頼性と乖離してしまうリスクがあるためです。また、診療とは異なる設備投資なども必要です。
そこで今、改めて経営の強力な柱として注目すべきなのが「健診・人間ドックサービス」です。
健診は、多くの病院がすでに保有している医療資源を活用しながら展開しやすく、病院本来の使命とも高い親和性を持っています。健診によって異常が見つかった患者様を診療でサポートすることは患者様の安心感、医療側の連携、そして収益性を鑑みても有用です。
人間ドックを病院経営の柱にする4つの意義
保険診療との親和性が高く、病院としての信頼を損なわずに経営基盤を強化できる人間ドックには、主に4つの決定的な意義があります。
①社会的意義が高い
超高齢社会を迎えた日本において「健康寿命の延伸」と「QOL(生活の質)の向上」は最重要課題です。単に病気を治して長生きしていただくだけでなく、病気を未然に防ぎ健やかな生活を支援する健診・人間ドックは、予防医療の中核を担う社会的意義の高いサービスと言えます。
②病院経営の安定につながる
人間ドックは自由診療であるため、自院の強みや検査機器のスペック、サービスの付加価値に応じた適正な価格設定が可能です。診療報酬の改定に左右されず、しっかりと利幅(利益率)を確保できるため、病院全体の収益構造を根本から支える「第二の柱」となりえます。
③医療設備を有効活用できる
CT・MRI・超音波・内視鏡などの高額な医療機器は、保険診療の稼働だけでは投資回収に時間がかかるケースが少なくありません。空き枠を活用して人間ドックの検査を組み込むことで、高額設備の安定稼働と投資対効果の最大化が実現します。
④医療スタッフの成長やモチベーションアップにつながる
人間ドック事業の導入は、現場の医療スタッフにとっても大きなメリットがあります。
「健康な状態」を知る貴重な機会
病気の治療だけに関わっていると、案外「健康な人の標準的なデータや状態」に触れる機会が少なくなります。健診の業務にも携わることで医療人としての視野やスキルが向上します。
業務の安定性が高く教育や職場復帰にも最適
健診は救急医療のような一刻を争うクリティカルさが比較的少なく、業務スケジュールを計画的に組みやすい特性があります。毎日一定数の受診者が見込めるため、若手の超音波検査技師や内視鏡医の「件数修行」も可能です。またシフトの調整も柔軟で、いわゆる「ママさんドクター・看護師・検査技師」の復帰の第一歩にも最適です。
まとめ
人間ドック・健診サービスは、単なる収益事業ではありません。地域住民の健康づくりに貢献しながら、病院経営の安定化、医療設備の有効活用、人材育成にもつながる重要な取り組みです。
診療報酬制度だけに依存しない経営基盤を築くことは、これからの病院経営においてますます重要になるでしょう。
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