「待ち時間が長い」という苦情は、多くの病院・健診施設で共通する課題です。対策といえば「待ち時間をいかに減らすか」が論議になりますが、もう1つ「時間を見える化する」アプローチ、具体的には待ち時間の目安と患者様の自由度を提供するアプローチも有用です。この2つをセットで考えるとより効果的になります。
アプローチ①待ち時間を減らす
まずは待ち時間そのものが長い問題があります。
これは端的に言えば「供給に対し需要が多すぎて溢れる」ということです。
1時間あたり5人しか診療ができないのに1時間あたり8人が来れば、3人溢れます。仮に午前9:00~12:00の3時間診療する場合、予約24人に対し12時までに対応できるのは15人、よって計算上12時時点でまだ9人も待っていることになります。
こう書くと当たり前に聞こえますが、実際の医療現場ではこれがとても多くみられます。
対策はシンプルです。
- 診療や検査毎の「標準時間」を決める
※標準時間とはその診療や検査が「おおむねこれくらいで完了する」目安の時間のことです
標準時間の決め方の詳細は別コラムにてご紹介します - 「標準時間」と「設備数」「稼働時間」がわかれば受入可能数が算出できるので、それをベースに予約枠を決める
理屈は簡単です。しかしながら、これができていない医療現場はとても多いです。
主な原因は「標準時間は決められない。時間がかかる患者様もいれば、すぐ終わる方もいる。医師、看護師、検査技師のスキルやチームの組み合わせでも変わる。ケースバイケースだ。」という意見です。繰り返しますが「ケースバイケースだ」という考え方そもものが根本原因です。
まずはその考え方をいったんリセットし「仮説で良いから標準時間を定義する」ところから始めます。
標準時間が決まれば、設備数と稼働時間を計算すれば、受入可能数が決まります。その数字と、患者様・受診者様がコンスタントに来る流れを作れば、待ち時間は大幅に削減できます。
※標準時間の決め方の詳細は別コラムにてご紹介します
アプローチ②待ち時間を見える化し、自由度を提供する
①のアプローチはすでに採用している病院・施設も多いでしょう。
しかし、実は患者様にとっては「待ち時間が長い」よりも「待ち時間が読めない」方がストレスが大きいことがあります。
病院側「少々お待ちください。」
患者様「どれくらい待ちますか?」
病院側「ちょっとわからないので、そのままお待ちください。」
貴院ではこのやり取りが常態化していないでしょうか?
これは実は患者様には相当なストレスになっています。できるだけ早くやめるべきです。
人は単に待たされることよりも「どれくらい待つのかわからないこと」に強いストレスを感じます。
逆に、おおよその目安と行動の自由度が提示されれば、患者様は時間を有効に活用できます。
- 5分なら、さっとお手洗いに行ける
- 10分なら、少し座って落ち着ける
- 20分なら、本を読んだり、PCを開いて作業ができる
- 30分なら、腰を据えて作業ができる、あるいは仮眠ができる
- 60分なら、カフェに行ったり、軽い食事ができる
多少の前後があっても「5分程度です」「30分はかかります」「このフロアであれば待合以外でもお待ちいただけます」「12時半までにお戻りください」など、時間の目安と自由度を提供できれば、それは患者様にとっての「自分時間」になり、ストレスは劇的に減ります。いつ呼ばれるかわからない10分より、自由に過ごせる1時間の方がはるかにストレスが少ないです。
このアプローチも現場からは「どれくらいかかるか一概には言えない。ケースバイケースだ」との声が100%確実に上がるでしょう。しかしそれは想定内です。そこで改善をあきらめてはいけません。①の「標準時間」と根本は同じで、自分たちの仕事は平均的にどれくらいかかるのかさえ算出できれば、あとは芋づる式に患者様に提供できる時間も算出できます。
「まt時間はおおよそこれくらい」と見える化し、かつ自由度を提供すれば、待ち時間そのもその短縮が難しくても、患者様満足度の低下が防げます。
まとめ
待ち時間対策は
①待ち時間そのものを減らす ②待ち時間見える化、目安と自由度を提供する
の2つのアプローチが有効です。いずれも鍵となるのは診療や検査の「標準時間」の定義で、これを決めることで受入可能数、所要時間、待ち時間が可視化されます。
標準時間はの定義は、最初は仮説から始まり試行錯誤が必要ですが、丁寧に検証を重ねることで、精度が高まります。
そうすれば①②のアプローチとも精度があがります。
最終的には患者様からの「今日は全然待たなかった」「スムーズになったね」といった声、さらには「1時間待ちって言われたから屋上庭園を散歩したら思いのほか素敵な場所だったわ!」なんてコメントもいただければ素晴らしいことです。
待ち時間は「短くする」だけでなく「患者様へ自分時間を提供する」をセットで考えるとより効果的です。